不眠を起こす病気

薬を使わないうつ病治療、認知行動療法と修正型電気けいれん療法について

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病院の廊下

前回の記事icon-external-link では、抗うつ薬などのうつ病の薬物療法について詳しく見てきました。

うつ病の治療はこの薬を使った薬物療法がメインとなりますが、症状を改善する治療法はこれだけではありません。

他にも医師とのカウンセリングによって行う認知行動療法や電気ショックを用いた修正型電気けいれん療法などがあります。

今回は、この薬物療法以外のうつ病の治療法についてうつ病だった筆者の経験を交えてご紹介していきます。







1. 認知行動療法

医師とのカウンセリング

薬を使用しないうつ病の治療法として近年注目されているのが認知行動療法という治療法です。

認知とは、出来事に対する考え方や解釈の仕方のことを指し、医師と患者さんの対話の中でこの認知のゆがみを修正していくことによって症状の改善や再発の防止を図るのが認知行動療法です。

これだけだとわかりづらいので具体的な例を見てみましょう。

仮にあなたが友人宅に行こうとして迷っている状況を想像してみてください。その際にどんなことを思うでしょうか。

しっかり目的地への行き方を調べればよかったと後悔する気持ち、友人が事前に教えてくれないことに怒る気持ち、時間に遅れたら友人に嫌われてしまうかもしれないという不安な気持ち、迷ったことでいつもと違う景色が見れて新鮮な気持ち、歩いていればそのうちつくだろうという楽観的な気持ちなど同じ出来事でもその捉え方によって生じる感情は違ってきます。

このような出来事から生じる感情は、自分の意思とは無関係に生じます。

これを自動思考といい、この自動思考がマイナスのイメージを持ってしまうとそれがストレスとなります。

ストレスはうつ気分を引き起こし、うつ気分はマイナス思考を形作ります。

ストレスがたまってうつ状態になると自分周囲、そして、将来についてマイナス思考になりがちです。

先ほどの例でいえば、友人宅に行くことさえできないなんて自分はダメな人間だ(自分)、そんな自分に友人は嫌気がさしているに違いない(周囲)、この先も同じような失敗をするに違いない(将来)といった具合になります。

このうつ状態の悪循環から抜け出すためには、マイナスのイメージを持ってしまう自動思考を変えていかねばなりません。

認知のゆがみを修正するとは、この自動思考に気づき、生じたマイナスのイメージや感情を自分で修正していくことです。

認知行動療法では、このような考え方のパターンを医師との対話の中で見直して思い込みや考えすぎを解きほぐしていきます。

具体的には以下のような流れとなります。

まず普段の出来事や困っていることを振り返り、自分の感情や認知のパターンを見つけます。

例えば、『家にこもっているのはよくないので外出したいが、日中に散歩に行くこともできない』という場合を考えてみましょう。

この時、考えてしまうのは、『近所の人に普通であれば働いている時間に散歩をしているなんてダメな人間だ思われるのが怖い、不安を感じる』といったことです。

そして、その考えの根拠を探してみます。

浮かんでくる根拠としては、『昼間に散歩をしている大人はいない、近所の人は異変に敏感に気付いてすぐ広めてしまう』といったことです。

次に、これらの考え方とは別の視点別の可能性を探ってみます。

平日が休みの人もいるので昼間に散歩などをする人はたくさんいるかもしれませんし、近所の人も仕事や家事をしているので出会うことはないかもしれません。

また、近所の人は昼間に散歩をしている姿を見ても何も思わない、あるいはたまたま休みの日だったと考えるかもしれません。

このように自分の考えの根拠について客観的に振り返り、別の考え方やとらえ方ができないかを見直します。

そして、自分の考え方の癖を見つけます。

うつ病の人に良くみられる考え方の癖(認知のゆがみ)は以下の7つがあります。

icon-check-circle-o恣意的推論
いわゆる思い込みや独断といったことで、証拠や根拠もなく自分のネガティブな考えを信じ込んでしまうタイプ。

icon-check-circle-o選択的注目
良いことも起こっているのに、些細なネガティブなことばかりに注目してしまい、情報を偏って選び取ってしまうタイプ。

icon-check-circle-o極端な一般化
わずかな結果や出来事から全体を決めつけてしまうタイプ。例えば、たった一度の失敗で、自分は仕事ができない人間だと思い込んでしまうことです。

icon-check-circle-o拡大解釈・過小評価
失敗などの悪いことは重大視し、逆に良いことに対しては小さく考え軽視してしまうタイプ。

icon-check-circle-o自己非難・自己関連付け
自分の責任を大きくとらえ、関係ないことでも自分と結び付けて自分のせいだと思ってしまうタイプ。

icon-check-circle-o2分割思考(白黒思考)
白黒つけないと気が済まない、結果を0か100かでしか考えられないタイプ。

icon-check-circle-o情緒的な理由付け
現実を客観的に見ることができず、感情を優先して判断してしまうタイプ。

散歩をすることができないという上の例でいえば、近所の人に悪く思われるに違いないという恣意的推論に当てはまります。

散歩以外にもいろいろな状況でこのように認知と感情を振り返り、同じような考え方の癖にはまってしまっていないかを確認し、それを少しだけ合理的な方向へ修正します。

このようなことを医師と患者さんで話し合い、患者さん自身が自分の思い込みや考え方の癖に気づくよう促します。

基本的には1回を30分ほどとし、これを16~20回ほど行います。

上の例でいえば、実際に散歩に出てみるといった宿題が医師から患者さんへ出されることもあります。

行動に移してみると、自分が思っていたよりも問題は起きずホッとするケースが多くあります。

このように行動を増やしていくと喜び充実感安心感を感じ良い循環になっていくことも期待できます。

また、認知行動療法は、自分の考え方を修正する根本的な治療なので、再発を予防したり、ストレスの対処法を学び今後の人生に活かしていくこともできます。

ただ、注意が必要なのは症状が重い急性期には行ってはいけないことです。

症状が回復し会話や多少の行動ができるようになってから行わないと、患者さんの負担が増え逆効果になってしまうこともあります。

更に詳しく知りたい方は、厚生労働省がつくった資料に認知行動療法についてわかりやすく説明されているので下記リンクから確認してみてください。

icon-external-link うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)[厚生労働省]

2.通電療法(修正型電気けいれん療法)

病院の廊下②

薬を使っても効果が得られず症状が重い場合や自殺の危険性があり治療の緊急性が高い場合には通電療法(修正型電気けいれん療法)という治療が行われることがあります。

通電療法とは、患者さんの頭部に数秒間ほど電流を流し、けいれんを起こすことで抑うつ症状といった精神症状を改善させる治療法で、これを1日1回、1~3日おきに数回から10回程度行います。

以前はこの通電療法を行うと、全身がけいれんすることにより骨折脱臼を引き起こしてしまうことがありましたが、現在では、全身のけいれんを抑えるために筋弛緩剤を使うようになっており、安全性は確保されています。(そのため修正型電気けいれん療法と呼ばれるようになっています。)

通電療法の症状改善効果は非常に高く、難治性のうつ病治療によく行われていますがデメリットもあります。

まず全身麻酔が必要であり、1か月以上継続して行うため入院が必要になることです。

入院における手間がかかるのはもちろんのこと、費用もばかにできない額になります。患者さんは休職や退職をしているケースが多いためこの費用は大きな負担となります。

また、効果は高いものの再発予防効果は低いといわれています。

さらに、専用の機器が必要なため通電療法を行うことができる医療機関は限られます。そのためこれを行うには通っているところとは違う病院に入院しなければならないケースがほとんどです。

なお、治療直後に一時的に記憶障害があらわれることもあります。ただ、しばらくすれば回復し後遺症も残らないのでさほど心配する必要はありません。

これらの認知行動療法や通電療法のほかにも、医師との対話によって人間関係を改善させていく対人関係療法や季節性のうつ病に効果のある光療法といった治療法が行われることもあります。

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3.筆者の経験

①認知行動療法について

私の治療の際にも薬物治療とともにカウンセリング形式認知行動療法を行いました。

担当医ではなく臨床心理士(以下、治療者と呼びます。)と1回約1時間を15回ぐらい行いました。

最初は心理テストをいくつかやり、その後日々の出来事についてどんなことを思っているのか、どんなことに困っているのかを話し合うといった流れです。

話し合うと書きましたが、正確には治療者がしゃべるのではなく話しているのはほとんど自分です。

困っていることがあればそれはなぜか、その根拠を挙げればまたそれはなぜそう思うのかといったように『なぜ?』を治療者は繰り返します。

カウンセリングと聞くと治療者が困ったことに相談にのってくれる人生相談のようなイメージを持ちますが、実際は大きく異なります。

治療者は話を掘り下げるだけで、考え方についてヒントをくれたり、こうしたらどうかという提案は基本的にはせず、ほぼ全てを患者にゆだねます。

ですので、自分で考え、自分で言葉に表現することを1時間ずっと行うことになります。

正直な感想を言えば、カウンセリングは非常につらかったです。

なぜの繰り返しはまるで尋問のように感じましたし、思ったことに対してなぜと聞かれてもなんとなくとしか答えられないこともたくさんあります。

でも、それを言葉に表現しなければ終わりません。

ですので、大分無理に考えをひねり出して答えることも多く、本心からそう思っているのか自分でもわからないことがたくさんあります。

もちろん治療者側も困らせようとしているわけではないのはわかってはいるのですが、責められているように感じたり、うまく答えられないことに自己嫌悪したりとカウンセリングをしたものの気分はスッキリせず、逆に落ち込んでしまうことが多かったです。

このような状況だったので治療者との相談の上、カウンセリングは途中で中止しました。

ですので、私の場合、症状改善に効果があったのは薬物治療だけです。

認知行動療法は薬を使わないすばらしい治療法であるといろんなところで紹介されていますが、それはいい面ばかりが注目されて実際の治療があまり伝わっていないと思います。

自分がこれまで考えてきたことや感じてきたことを他者に伝えるのは正常な人でも大変です。

就職活動の面接でもこのようなことを話さねばなりませんが、それと大きな違いはありません。

ただ、自分の考え方を振り返ることはうつ病では非常に大切だと思います。

ですので、私の場合は日々の思ったことを日記に書くようにしていました。

それを自分自身で振り返ることもできますし、文章を書くのは意外と頭を使うのでリハビリにもなります。

私自身があまり自分をさらけ出すのが得意なタイプではなかったので一人で行える日記の方が合っていたのかなと思います。

これらはあくまで私個人の経験であり、他のすべての認知行動療法の実態を示しているわけではありません。

しかし、今後この治療法を検討する際は、どんなことをするのか、どういう風に進行するのかはきちんと把握しておいた方がいいです。

薬を使わない方法といってもこれだけで症状をすぐ改善できるわけではありませんし、治療のメインは薬物療法です。

あくまで薬の補助手段として考えるべきであると思います。

②通電療法

急性期において、症状が重かったこともあり、一度医師から通電療法を勧められたことがあります。

普段通っている精神科が専門の病院ではなく大きな総合病院を紹介され、その病院の医師による問診を受けました。

1時間にも及ぶ長い問診の結果、通電療法を受ける必要はないと診断されました。

上でも触れたように通電療法は効果が高いものの、デメリットもあります。これらを総合的に考えた上で私の場合はデメリットの方が大きいと判断されたのだと思います。

うつ病の治療に通電療法があることを知っている人はあまり多くないと思いますが、実際にこのように治療法として検討されることもあります。

ですので、最低限の知識は持っておいた方がよいかと思います。

まとめ

以上、薬を使わないうつ病の治療法についてご紹介してきました。

認知行動療法でも行うように、うつ病の発症には何かしらこれまでの自分の考え方や物事への捉え方が関係しています。

まわりの人間関係や職場などの環境を変えることはリスクもあり難しいことですが、自分の考え方は自分の力で変えることができます。

うつ病を予防する上でも、再発を防ぐためにも自分の自動思考に気づきマイナス思考にはまらないようにするのは生きていく上で非常に大切です。

症状は薬で改善することができますが、生き方は自分でしか変えることはできません。

それを認知行動療法という手法で学ぶのかどうかは別にしてもすべての人に必要なことであり、心にとどめておくべきではないかと治療を終えた今だからこそ強く思います。

抑うつ感、不眠など誰もが知っておくべきうつ病の主な症状と原因
何科を受診するべき?うつ病の病院での診断とその診断基準
うつ病の薬物治療における5つの薬と治療中の過ごし方







参考:
・57の症例で見つかる、うつ病の抜け出し方 確実に治るうつ、治らないうつ 森下茂
・うつ病 正しく知って治す 総監修 野村総一郎
・よくわかるうつ病 診断と治療 周囲の接し方・支え方 尾崎紀夫
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)[厚生労働省]
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