不眠を起こす病気

うつ病の薬物治療における5つの薬と治療中の過ごし方

薬による治療

前回の記事icon-external-link では、精神科等における病院でのうつ病の診断についてご紹介してきました。

診察によりうつ病とわかった場合は、以後治療を進めていくこととなります。

現在では、薬を使わない認知行動療法などもありますが、基本的にはうつ病の治療には薬を使った薬物療法が行われます。

今回は、このうつ病の治療における薬物療法についてうつ病だった筆者の経験を交えてご紹介していきます。







1.治療期間・経過

うつ病の治療は、抗うつ薬などの薬の服用によって行われますが、すぐに症状が改善するわけではありません。

重症度合いにもよりますが、症状が安定し復職や復学をするまでには半年以上はかかります。

治療のおおよその経過は以下の通りです。

うつ病治療の経過

まず治療が始まると抗うつ薬が処方されますが、抗うつ薬は飲んですぐ効果が出るわけではなく少なくとも2週間はかかります。

しかも代わりに副作用もあるので、症状が悪いままである急性期は非常につらい時期となります。

また、処方された薬が合わないこともあるので、その場合は薬を変えて様子を見るためこの期間が延びることもあります。

この急性期には、絶対安静がベストです。

可能であれば、家事も仕事もまったくせずゴロゴロしているのが一番の休養になります。

うつ病にかかる人は、そもそも休息をとることが苦手なタイプが多いですが、休息がなによりの治療だと思ってゆっくりするのが回復への近道です。

もし症状が重く、様々な理由で家でゆっくりできない場合は入院することも選択肢の一つとなります。

このように休息をとり症状が回復してきたら、徐々に活動を増やしていきます。

急性期にはほとんど寝ている状態なので生活リズムがくるってしまっていることが多いです。

ですので、回復期には朝に起きて夜に眠るというリズムを整え、可能であれば外に出て散歩をしたりします。

ただ、あくまで回復し始めた時期であり、無理をするとまたぶり返してしまうことがあるので注意が必要です。

そして、さらに症状が安定してきたら、復職や復学の準備を始めていきます。

なお、この状態になっても薬の量は減らしていくものの服用は続けます。薬は再発を防ぐために症状がなくなったとしても半年から一年以上は服用することとなります。

このような流れで経過を見ていきますが、単純な右肩上がりでは進まず、良くなったり悪くなったりのが必ずあります。

これを繰り返しながら徐々に回復に近づいていくこととなるので、回復を信じて焦らずじっくり治療を進めていくことが必要となります。

2.抗うつ薬

うつ病の薬物治療では、抗うつ薬の服用が中心となります。

前回の記事でも触れたようにうつ病は脳内物質であるセロトニンノルアドレナリンが減少することによって生じます。

抗うつ薬は、このセロトニンやノルアドレナリンを増やすことによって症状を改善させる効果があります。

抗うつ薬には、古くから使われている三環系抗うつ薬四環系抗うつ薬、そして比較的新しく導入されたSSRISNRINaSSAなどが主に使われます。

①三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増加させる効果のある薬で、他の薬と比べて効果が強いといわれています。

その反面、副作用が多い傾向があり、眠気立ちくらみ口の渇き便秘などが起こることがあります。

②四環系抗うつ薬

四環系抗うつ薬は、主にノルアドレナリンを増加させる作用があります。

効果は三環系抗うつ薬より弱いといわれていますが、その分他の薬よりも即効性があります。

副作用も三環系よりは緩やかで、主な症状は眠気などが挙げられます。

③SSRI

SSRIは日本語では選択的セロトニン再取り込み阻害薬といい、セロトニンのみを増加させる作用があります。

他の作用は抑えてあるため三環系や四環系と比べて副作用が少なくうつ病治療ではまず最初に検討される薬です。

ただ、意欲高める効果が低いことや効果が出るまで時間がかかるといったデメリットもあります。

また、副作用がないわけではなく、飲み始めに吐き気などの症状があらわれることがあります。

④SNRI

SNRIは日本語ではセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬といい、三環系と同様にセロトニンとノルアドレナリンの両方を増やす作用があります。

副作用が少なく、他の薬との相性がよいため薬の併用がしやすいことやSSRIにはない意欲を高める効果があるのがこの薬の長所です。

そのためSSRIとともに第一選択の薬として検討されます。

また、女性より男性のうつ病に有効であるとされています。

ただSSRIと同様に副作用がないわけでなく、排尿障害動悸などが起こることがあります。

⑤NaSSA

NaSSAは、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬と呼ばれ、2009年に承認された新しい薬です。

セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用し、即効性があって副作用が少ないこと、そして、強い鎮静作用があるのが特徴です。

こちらも副作用がないわけではなく、眠気口の渇きなどが生じる場合があります。

⑥抗うつ薬の使われ方

これらの薬は性別や年齢によって効果が異なり、それに沿って処方されることとなりますが、基本的には最初にSSRI、またはSNRIが使用され、これが両方とも効果がない場合に三環系四環系が使われることとなります。

うつ病の薬物治療

⑦服用の注意

抗うつ薬は、その症状の重さの違いはあれど高い確率で副作用が生じます。

この副作用の辛さから、あるいは、症状が改善したからと抗うつ薬を自己判断でやめてしまう場合がありますが、これは絶対に避けるべきです。

抗うつ薬の服用を途中でやめるとその後の再発の可能性を高めてしまったり、頭痛や吐き気、不眠といった離脱症状があらわれることがあり大変危険です。

ですので、抗うつ薬の服用は必ず医師の指示に従いましょう。

スポンサーリンク





3.その他の薬

うつ病は、必ずと言っていいほど精神症状とともに不眠があらわれますが、抗うつ薬は効果に時間がかかるため同時に睡眠薬が処方されるケースがほとんどです。

睡眠薬には、持続時間が短いものから長いものまで種類が分かれており、入眠障害や中途覚醒など不眠のタイプによってこれに合った薬が処方されます。

睡眠薬というと依存性や副作用が心配されますが、現在の睡眠薬は正しく服用すれば依存性はなく重篤な副作用があらわれることもほぼありません。

睡眠薬のほかにも、不安やイライラを抑える抗不安薬、気分の波を抑える気分安定薬、幻覚や妄想を抑える抗精神病薬などが処方されることもあります。

副作用が怖い?不眠症解消のための睡眠薬との正しい付き合い方

4.筆者の経験

①使用した薬

私の場合の治療も薬物療法が中心です。

しかし、効果のある薬になかなか巡り合えず長期間にわたり薬を何度も変えています。

実際に服用した抗うつ薬は以下の通りです。

レクサプロ(SSRI)⇒サインバルタ(SNRI)⇒アモキサン(三環系)⇒トリプタノール(三環系

※薬の商品名を示しています。

このように計4種類の抗うつ薬を服用し、最後の三環系であるトリプタノールでやっと症状が治まるようになりました。

これにたどり着くまでに約半年ほど、そして、その後症状が安定するまではさらに半年ほどかかりました。

これを合わせると診断から安定までは約1年ほどかかったことになります。

ですので、先ほど紹介した急性期や回復期といった期間はあくまで目安と考えた方がいいと思います。

また、SNRIであるサインバルタを服用し、これを変更するために飲まなくなった時に頭が割れるように痛む離脱症状を味わいました。

医師の指示には従っていながらもあらわれたので人によって敏感に反応してしまうことがあるのかもしれません。

この抗うつ薬と同時に超短時間型の睡眠薬抗不安薬、そして、一時期抗精神病薬も服用していました。

なお、私が感じた薬による副作用は眠気便秘でした。

しかし、眠気はそもそも眠れなくて睡眠薬を飲んでいるほどだったのでそれほど苦痛ではありませんでしたし、便秘に関しても便秘薬を同時に処方されたのでうまく対応することもできました。

これもあらわれる症状の種類や重さには個人差がかなりあると思います。

②治療中の過ごし方

回復期は図書館で過ごす

治療開始後の最初の数か月は、ほぼ外に出ず家の中で過ごしていました。

本を読んだり、テレビを見たりということができなかったのでほとんどテレビゲームをしていました。

もともとあまりゲームをする方ではなかったのですが、何もしていないと嫌なことを考えてしまうので何かしら頭を使うことをしたかったからというのが主な理由です。

ずっとゲームをしていると『周りはみんな働いているのに自分だけ遊んでいていいのか?』という焦りは常に感じていました。

しかし、何度も本を読んだり勉強をしたりしてみましたが、この時期は集中できず逆にできないことに落ち込んでしまったので、今は仕方ないと言い聞かせていました。

なお家事は、ほぼ家族にお願いしていました。

薬が効き始め、症状が軽くなってきてからは散歩ジョギング、そして、読書を主にしていました。

特にジョギングは落ちた体力を取り戻すことや頭の中をすっきりさせるためには非常に有効であったと感じています。

また、読書を家でするのではなく毎日図書館に足を運び、図書館で本を読むようにしていました。

急性期はほぼ家にいたので人がいる空間に慣れるためです。

図書館に行き始めは、『大の大人が昼間に何で図書館にいるんだ?』と思われているのではないかとびくびくしていました。

しかし、今後復職するためのリハビリとしてこれを続けると次第にそのような恐れも薄れていきました。

ほかにもリハビリとして図書館ではなくカフェに行ったり、食事をあえて人目のつく外食にしたりといったことをしました。

その後さらに回復してきたら、パソコンで簡単な作業をしたり、短期のアルバイトをしたりして徐々に社会復帰を進めていき現在に至ります。

まとめ

以上、うつ病の治療について薬物療法を中心にご説明してきました。

これまで述べてきたように、治療は、特に急性期においては、症状も改善せず非常につらい思いをすることになると思います。

しかし、自分に合った薬がみつかれば必ず症状は改善します。

人によってこれらの期間は変わってきますが、必ず良くなる日が来ることを信じて焦らずじっくり治療に取り組んでもらえたら幸いです。

次回の記事では、薬物療法以外の治療法についてご紹介していきます。

薬を使わないうつ病治療、認知行動療法と修正型電気けいれん療法について

抑うつ感、不眠など誰もが知っておくべきうつ病の主な症状と原因
何科を受診するべき?うつ病の病院での診断とその診断基準







参考:
・57の症例で見つかる、うつ病の抜け出し方 確実に治るうつ、治らないうつ 森下茂
・うつ病 正しく知って治す 総監修 野村総一郎
・よくわかるうつ病 診断と治療 周囲の接し方・支え方 尾崎紀夫

あなたにおすすめの記事

SNSでもご購読できます。

コメント

  1. まる より:

    タンタンさん初めまして。
    いつも有益な情報ありがとうございます。

    私も抗うつ剤が体に合わず、朝飲むと吐き気が収まらない、
    夜飲むと眠れない状態が続き、とても苦しみました。
    https://maru-opt.com/health-control/depression/depression/

    先生からは、文中にあるように2週間飲み続けないと
    効果が判らないと言われていたので、我慢して飲み
    続けるしかありませんでした。

    いつも、記事内容参考にしています。
    今後ともよろしくお願いいたします。

    1. タンタン より:

      まるさん
      コメントありがとうございます。

      抗うつ薬は効くか効かないかという時点でわからない点が多く、患者側としては非常につらいものがありますよね。

      幸いにも私の場合は副作用があまり強くない方だったのでよかったのですが、やはり副作用で悩む方もいらっしゃいますよね。

      この記事を書くにあたりかくこと自体をどうしようか迷ったものですが、誰かのお役に立てたのならうれしく思います。

      こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

コメントを残す

*

CAPTCHA