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新薬の効果は?糖尿病の最新治療における薬物療法

糖尿病の最新治療における薬物療法

前回の記事icon-external-link では、糖尿病の治療において欠かせない食事療法と運動療法についてご紹介してきました。

基本的にはこの2つの生活習慣の改善が主な治療となりますが、これらを行っても血糖値が下がりきらない場合、薬を使った薬物療法がとられていくことになります。

糖尿病の治療で使われる薬には、インスリンの分泌を促すSU剤やインスリンを直接補充するインスリン療法などが一般的でしたが、近年では研究が進み最新の治療薬が導入され始め、糖尿病の薬物療法は大きく変わってきています。

今回は、近年導入された最新治療薬を含め糖尿病の薬物療法で使われる薬についてご紹介していきます。







1.SU剤(インスリン分泌促進薬)

糖尿病の薬として長年第一線で使われてきたのが、血糖値を下げる飲み薬であるSU剤(スルフォニル尿素剤)です。

糖尿病は膵臓のβ細胞から分泌されるはずのインスリンがうまく分泌されないことによって起こる病気です。

SU剤はこのβ細胞を刺激して、インスリンの分泌を促す作用のある薬です。

これによりインスリンがより多く分泌されるようになれば、その作用により血糖値を下げることができます。

このようにβ細胞を刺激してインスリンを分泌させることが主な作用なので、この薬を使う場合には、その患者さんにインスリンの分泌機能がまだ残っていることが前提となります。

そのため、β細胞が破壊されてしまっている1型糖尿病では効果がなく、β細胞がまだ残っている2型糖尿病の方が対象となります。

SU剤は長年使用されていることもあって安全性が確保されてはいますが、デメリットもあります。

それは低血糖を起こしてしまう可能性があることです。

インスリンは血糖値を下げる作用があるため、SU剤を多く服用しすぎたり、食事を抜いたのにも関わらず服用したりすると血糖値が下がりすぎて低血糖症を起こしてしまうことがあります。

また、他にも体重を増加させてしまったり、長期的に使用すると効果が弱まることがあるので必ず医師の指示に従って服用するよう注意しなければなりません。

2.ビグアナイド薬(インスリン抵抗性改善薬)

インスリンが分泌されていてもその血糖値を下げる作用がうまく働かないことをインスリン抵抗性と呼びますが、このインスリン抵抗性を下げてインスリンを効きやすくすることで血糖値を下げるのがビグアナイド薬です。

価格も安いこともあって、欧米では2型糖尿病の治療薬としては多くの場面で使用されています。

SU剤だけでは効果が不十分な場合にこれと併用して、あるいは食欲を抑える作用もあるので肥満の場合や過食傾向がある場合に使用されます。

かつて日本では海外の使用されている量の1/3までしか認められておらず効果を期待できないことも多かったのですが、近年この制限が緩和され海外と同程度使用できるようになったこともあり日本でも使用する機会が増えています。

ただ、副作用として血液が酸性に傾き、場合によっては昏睡や死にも至る可能性のある乳酸アシドーシスを起こしてしまうこともあるので、これが起こりやすい腎機能や肝機能、肺機能に障害がある方、高齢の方が使用する場合には注意が必要となります。

3.α‐グルコシダーゼ阻害薬(食後血糖値改善薬)

α‐グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で糖質を分解する酵素であるα‐グルコシダーゼの働きを阻害することで糖分の消化吸収を遅らせる作用のある薬です。

この作用により食後の血糖値の上昇を抑えることができます。

また、膵臓からのインスリンの分泌のタイミングが遅れてしまう2型糖尿病の場合には、糖分の消化吸収を遅らせるのでタイミングがマッチして血糖値をうまく下げることができます。

比較的軽症の患者さんが対象で、食事療法の補助として処方されることが多く、近年糖尿病の予備軍である境界型糖尿病の患者さんにも使えるようになりました。

副作用としてはお腹がゴロゴロするといった消化器症状があらわれることがあります。

薬の概要①

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4.インスリン療法

SU剤やビグアナイド薬はインスリンを分泌しやすくしたり、インスリン抵抗性を下げてインスリンを効きやすくするのに対し、インスリン自体を外から補充しようとするのがインスリン療法です。

既にβ細胞が破壊されインスリンの分泌ができない1型糖尿病の場合には必須の治療法であり、また、まだインスリンの分泌する能力が残っている2型糖尿病でも、食事療法や運動療法、そして飲み薬でも血糖値をうまくコントロールできない場合に行われることもあります。

そのため、インスリン療法は糖尿病が悪化した、あるいは他に治療法がない時に行われる治療というあまりよろしくないイメージがありましたが、近年では、2型糖尿病の治療においても早期の段階でこのインスリン療法を行うことが目立ってきています。

この早期インスリン療法を行う事例としては、血糖値が非常に高く、この高血糖状態そのものがインスリンの分泌を妨げ、糖尿病を悪化させてしまう『糖毒性』をリセットしなければならないときに行われます。

この状態になってしまうと食事療法や飲み薬を用いても血糖値は簡単には改善されず、高血糖が高血糖を呼ぶ悪循環になってしまいます。

そこで、このインスリンを補充することによって一度血糖値を強制的に下げて悪循環を断ち切ろうという治療法が早期インスリン療法です。

そのため、インスリンを補充するのはあくまで一時的でこの糖毒性を取り除いた後は、飲み薬のみに、あるいは飲み薬との併用に切り替えていくことになります。

インスリンを注射する回数については、現在では1日3回以上注射することで細かく血糖値をコントロールする強化インスリン療法が主流となっていますが、患者さんのライフスタイルや病態などに合わせて柔軟に調節していくことになります。

また、注射というと痛いイメージがありますが、現在の注射器は改良が進み、針が超極細となっているためほとんど痛みを感じることはありません。

5.DPP‐4阻害薬・GLP‐1受容体作動薬(インクレチン関連薬)

近年導入され糖尿病治療に大きな変化をもたらした薬が、DPP‐4阻害薬GLP‐1受容体作動薬といったインクレチン関連薬です。

インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンで、高血糖の状態になると膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促す作用があります。

インクレチン関連薬はこのインクレチンの作用を高めて血糖値を改善させる薬です。

インクレチンには小腸上部から分泌されるGIPと小腸下部から分泌されるGLP‐1の2種類がありますが、インスリンの分泌促進効果が高いのはGLP‐1で、インクレチン関連薬はこのGLP‐1の作用を活用しています。

GLP‐1は食事をとり、血糖値が上がると分泌されますが、分泌後たった2分でDPP‐4という酵素によって分解され消えてしまいます。

なぜこんなに早く分解されてしまうのかは解明されていませんが、インスリンの分泌を促し血糖値を下げるのに役立つGLP‐1が消えてしまっては糖尿病の改善においては好ましくありません。

そこで、このGLP‐1を分解してしまうDPP-4の働きを阻害して血糖値を改善させようとするのがDPP-4阻害薬です。

インスリンを分泌促進する薬というと最初にご説明したSU剤と同じようなものと感じてしまいますが、大きく異なる点があります。

それは低血糖を起こしにくいという点です。

SU剤は膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促すので、食事を抜いたときや大量に使用した時にはインスリンの血糖値を下げる作用が効きすぎて低血糖になってしまう恐れがあります。

しかし、DPP-4阻害薬によってGLP-1が増えたとしても、GLP‐1はあくまで食事をとって血糖値が上がった時にしか作用しません

つまり、血糖値が低い時にさらに下げるという働きはないので低血糖を起こす心配はほぼありません。

※ただ、SU剤とDPP-4阻害薬を併用する場合においては、SU剤が効きすぎて低血糖を起こしてしまう可能性は残っています。

また、SU剤には体重を増加させてしまう傾向がありますが、GLP‐1は逆に脳の満腹中枢を刺激して満腹感を感じやすくさせるという働きがあるとも言われているので体重が増える可能性も低いといえます。

さらに、α‐グルコシダーゼ阻害薬やビグアナイド薬などとの相性も良く併用して使用することもできます。

GLP‐1を分解させるDPP-4を阻害して相対的にGLP‐1を増やすのがDPP-4阻害薬ですが、これに対して人工のGLP‐1を直接注射して補充しようとするのがGLP‐1受容体作動薬です。

GLP‐1はインスリンを分泌するβ細胞の受容体に結合することで作用します。

要するに、β細胞にはGLP‐1が作用するための専用のかぎ穴があり、そこにくっつくことで様々な作用を起こします。

注射によって補充するGLP‐1受容体作動薬は、正確にはGLP‐1そのものではなく似た物質で、DPP-4に分解されにくいようにできています。

これがβ細胞のGLP‐1専用のかぎ穴にくっつくことでGLP‐1と同様のインスリン分泌促進作用を発揮します。

インクレチン関連薬の作用

GLP‐1受容体作動薬もDPP-4阻害薬と同様の理由で低血糖を起こしにくい点が特徴ですが、同じインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬との大きな違いはGLP‐1の濃度を高める強さです。

DPP-4阻害薬はGLP‐1の濃度をおよそ2倍に高めるのに対して、GLP‐1受容体作動薬はおよそ6~8倍になるといわれています。

そのため食欲を抑える作用もGLP‐1受容体作動薬の方が高いとされています。

ですので、GLP‐1受容体作動薬はかなりの肥満である、過食傾向がある、そしてHbA1cの数値が高い場合などに向いています。

そして、GLP‐1受容体作動薬は注射薬ですが、DPP-4阻害薬は飲み薬であり、処方される患者さんの負担の度合いも変わってきます。

6.SGLT2阻害薬

インクレチン関連薬よりさらに新しい糖尿病治療薬で、2014年に日本でも承認され始めたばかりの薬がSGLT2阻害薬です。

SGLT2阻害薬は、これまでの薬が何らかの形でインスリンの働きを促すものだったのと大きく異なり、余分な糖分は尿として排出させてしまうことで血糖値を下げるという画期的な薬です。

尿は血液が腎臓を通ることで不純物などが取り出されて体外へ排出されます。

血液が腎臓に到達した時、まず毛細血管の塊である糸球体というところを通ってろ過され、原尿とよばれる尿の前段階の状態になります。

原尿の段階だとまだ血中に含まれていたブドウ糖はほぼそのままの状態です。ブドウ糖は本来エネルギーとなるものなので身体としてはできるだけ捨てたくはありません。

そこで、糸球体から膀胱に到達するまでの間の尿管ではこのブドウ糖を血中に再吸収する作用があります。

この再吸収の作用を担っているのがSGLT2という物質です。

SGLT2は原尿に含まれるブドウ糖の99%以上を血液に戻しています。

しかし、糖尿病は血中のブドウ糖が多くなりすぎることによって起こる病気です。

では、この腎臓におけるブドウ糖の再吸収をさせなくしてしまえば血糖値を下げることができるのではと考え開発されたのがSGLT2阻害薬です。

ブドウ糖を再吸収するSGLT2の働きを阻害し、ブドウ糖をそのまま尿として排出してしまおうというわけです。

このSGLT2阻害薬の血糖値改善効果は著しく、これを服用した患者さんの9割以上が1か月後には空腹時血糖値の低下を自覚するといわれています。

また、本来吸収するはずだったエネルギーを丸ごと排出しているため体重減少効果も期待できます。

治験の段階では、2か月で2kgも減ったという結果も出ているほどその体重減少効果はかなりシャープにあらわれます。

さらに、インクレチン関連薬と同様に血糖値が高い時にしか作用しないため低血糖を起こす心配もほぼありません。

これだけ聞くとまるで魔法のような薬に思われると思います。

実際に、日本医科大学客員教授である鈴木吉彦氏は糖尿病最新治療・最新薬という本の中で究極の糖尿病治療薬であると表現しています。

しかし、このような糖尿病の改善のメリットだけがあるわけではありません。

ブドウ糖が尿として排出されるからといって過食をしてしまえば、ブドウ糖の再吸収阻害作用の限界を超え血糖値が上がってしまうこともあります。

また、尿に含まれる糖の濃度が高いとこれに伴い体内の水分も多く尿として排出されてしまいます。

そうなると脱水症状となり、高齢の方、心臓にリスクを抱えている方の場合、大血管障害が引き起こされる可能性も生じてきます。

さらに、体重を大きく減らす作用があるので既に痩せている方への処方は難しいといわざるを得ません。

このようにその糖尿病改善効果は凄まじいものの、リスクもあり処方できる患者さんも限られるという意見もあります。

なによりまだ導入されて月日が経っていないのでまだ臨床実績が整っていません。

今後何年か運用した結果を見てその効果を判断した方がよいと思われます。

まとめ:患者側も薬に対する知識を

以上、最新治療薬を含めた糖尿病治療で使用される薬について詳しく見てきました。

糖尿病の治療薬の開発は近年大きく進んでおり、多くのタイプの薬が導入されています。

各種類の薬にはそれぞれメリット・デメリットがあり、また、飲み薬と注射薬という違いによる患者さんの負担の度合いも異なってきます。

ですので、どの薬が一番良いということはなく、患者さんの病状の進行具合やライフスタイルなどによって使用される薬は変わりますし、違う種類の薬を併用することも考えられます。

患者さん自身も薬に対する知識を持ち、医師と相談して患者さんに本当に適した薬を選んでいくことが大切です。

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参考:
・よくわかる最新医学 糖尿病最新治療・最新薬 鈴木吉彦
・糖尿病今注目の最新療法 清野裕

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