皆さんは眠るときいびきをかいていますか。あるいは、夫や恋人などパートナーがいびきをかいていて眠れないといったことはありませんか。
多くの人はいびきをかいていてもうるさいとしか思いませんが、もしかしたらそれは重大な病気のサインかもしれません。
その病気とは、睡眠時無呼吸症候群です。
漢字ばかりが並び難しそうな名前ですが、この病気は時には重大な事故や命にかかわる病気の原因ともなりうる危険なものです。
今回はこの睡眠時無呼吸症候群の症状やその原因についてご紹介していきます。
目次
1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
① 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り睡眠中に呼吸が止まったり浅くなってしまう病気のことで、『Sleep Apnea Syndrome』の頭文字をとってSASと呼ばれています。
睡眠時に呼吸が止まることで、睡眠が浅くなり日中に強い眠気を感じたり、イライラしたり、集中力がなくなってしまったりする睡眠障害の一つです。
この睡眠時無呼吸症候群に特徴的なのが睡眠時のいびきです。
単なるいびきと思ってしまいがちですが、それによる日中の眠気や集中力の低下は仕事上での重大なミスや大事故を起こしてしまう危険性をはらんでいます。
② 患者は200万人もいる
睡眠中にいびきをかく人は、日本では約2000万人いるといわれていますが、そのうちの200万人は睡眠時無呼吸症候群であると推定されています。
しかし、実際に治療を受けているのは患者数は6万人程度で、ほとんどの人が病気と自覚せず日々いびきや眠気と戦っています。
③ 睡眠時無呼吸症候群の定義・タイプ
睡眠時無呼吸症候群は、正確には『10秒以上続く無呼吸が一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上起こること』と定義づけされています。
さらに、その無呼吸が起きる原因によって大きく2つのタイプに分類されます。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に空気の通り道である気道がふさがってしまい呼吸ができなくなるもので、ほとんどの睡眠時無呼吸症候群がこのタイプに分類されます。
「ガーッ、ガーッ」という大きないびきをかき、そのいびきが突然止まったり、また始まったりを繰り返すのが特徴です。
中枢型睡眠時無呼吸症候群
呼吸をつかさどる脳の中枢部分の働きに異常が起きていることが原因で呼吸が止まってしまうタイプです。
閉塞型に比ベるといびきも少ないものの途中で目が覚めてしまうことが多いという特徴があります。
以下では睡眠時無呼吸症候群で最も多い閉塞型について説明していきます。
2. 睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群にはいびきを含め多くの症状があります。
以下で各症状について説明していきますが、これらに多く該当する場合はこの病気である可能性が高いです。
不安がある方はご自分やご家族に当てはまるかどうか確認しながらご覧ください。
① いびき・無呼吸
まず睡眠時無呼吸症候群の症状の中で最も特徴的な症状はいびきと無呼吸です。
ただ、睡眠中にかくいびきすべてが睡眠時無呼吸症候群であるわけではありません。
眠ってすぐや疲れているとき、お酒を飲んだ時にかくいびきは習慣性のいびきと呼ばれ、だれしもがかくものであって病気ではありません。これらのいびきは、比較的音も小さい傾向があります。
一方、睡眠時無呼吸症候群のいびきは「ガァーッ、ガァーッ」という大きないびきです。
また、そのいびきが突然止まったり(呼吸が止まっている)するのも大きな特徴です。ほかにもいびきの特徴としては以下のようなものがあります。
- 仰向けになると大きくなる
- 音に強弱がある
- 朝までずっと続く
- 突然息が詰まったようにいびきが途切れる
- 呼吸が止まった後の大きな音のいびき
- 最近いびきが多くなって音も変わってきた
いびきの怖いところは自分で確認できないことです。
もし、日中眠気があり活動に支障が出ている場合は、一度パートナーや家族に自分の状態を一度を確認してみてください。
あるいは、スマホなどで睡眠中の状態を録音してみるのも効果的です。
② 何度も目が覚める、熟睡感がない
睡眠中に無呼吸となると、当然息苦しくなって途中で何度も目が覚めてしまいます。
また、途中で起きている自覚がなくても睡眠の質の低下により熟睡感が感じられないことも多くあります。
一見すると不眠症のように感じますが、睡眠時無呼吸症候群が不眠の原因である場合、睡眠薬も効果はなく、時に逆効果となってしまうこともあります。
③ 夜間頻尿
夜間頻尿も睡眠時無呼吸症候群で特に多くみられる症状です。ひどい場合はそのまま失禁してしまうことさえあります。
大きないびきをかくと腹圧が上がって尿意がもよおされたり、同時に尿を出さないようにしているホルモンの分泌が低下するために頻尿の症状が現れます。
夜間頻尿が生じることでも中途覚醒が多くなったり、熟睡感が得られないといった不眠の原因となってしまうこともあります。
④ 日中の過度な眠気
このように十分に睡眠時間をとっていても実際はちゃんと寝れていないため、日中に強い眠気を感じ、居眠りをしてしまうようになります。
睡眠不足のときは誰しも眠気を感じてしまうものですが、自分の意志で我慢できるケースがほとんどでしょう。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の場合は非常に強い眠気であることが多く、重要な取引先との商談中やテスト中など本来緊張で起きていられるような大事な場面でも居眠りをしてしまうこともあります。
また、この眠気により意欲の低下や集中力の低下といった症状があらわれることもあります。
⑤ 肥満
あとでふれますが肥満は睡眠時無呼吸症候群の原因でもある一方で、無呼吸が肥満を引き起こしてしまうこともあります。
ここで関係してくるのは成長ホルモンです。
成長ホルモンは、その名の通り骨や筋肉の成長を促したり、壊れた筋肉を治していく機能のほかに、脂肪を分解する機能もあります。
この成長ホルモンの分泌に欠かせないのは深い睡眠です。
浅い眠りになってしまった場合、成長ホルモンの分泌は最大30%まで減少するといわれています。
この病気は睡眠時の無呼吸により浅い眠りを引き起こします。そうすると成長ホルモンがうまく分泌されずに太りやすくなってしまうのです。
以上、5つの代表的な症状を挙げてきましたが、ほかにも起床時の頭痛や寝汗、日中の疲労感・倦怠感、時には勃起不全(ED)などの症状があらわれることもあります。
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3. 睡眠時無呼吸症候群の原因とメカニズム
睡眠時の無呼吸は上気道が狭くなることから生じます。
健康な人でも睡眠中には気道の周りの筋肉が緩み、気道は狭くなりますがこの程度では無呼吸は生じません。
しかし、これに肥満が加わってくると話は別です。
肥満によって舌の周りに脂肪がついてくるとただでさえ睡眠中は狭くなりがちな気道がさらに狭まり無呼吸やいびきを引き起こします。
このように睡眠時無呼吸症候群の発症の主な原因は肥満です。
実際にアメリカでのSAS患者の90%以上が肥満です。また、肥満の人はそうでない人の3倍以上の発症リスクがあるとも言われています。
しかし、痩せているからといって安心はできません。
生まれつき骨格が細い人、あごが小さい人、首が短い人、首が太い人なども気道が塞がりやすく睡眠時の無呼吸の原因ともなります。
特に日本人の場合、短く平らな顔、小さなあご、のどが咽頭(のどちんこ)の近くになる、扁桃腺が大きいなどの骨格的な特徴が無呼吸の原因になってしまうケースが多くあります。
実際に、アメリカ人とは違い日本人では患者の3~4割が標準体重であるといわれています。
4. 睡眠時無呼吸症候群のリスク
① 居眠り運転による交通事故
睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質の低下により日中に強い眠気に襲われると書きました。
強い眠気は、自分の意志では我慢できないほどのものです。これが運転中に起こることを想像するだけで怖いものがあります。
アメリカの調査によると睡眠時無呼吸症候群患者による事故発生率は健康な人の約7倍にもなると報告されています。
仕事で車を運転する機会が多い人は特に注意する必要があります。
参照:Findley, L. J., et al. (1988). “Automobile accidents involving patients with obstructive sleep apnea.” Am Rev Respir Dis 138(2): 337-340.
② 合併症
睡眠時無呼吸症候群で最も恐ろしいのはそれによって引き起こされる合併症です。主な合併症は高血圧と糖尿病といった生活習慣病です。
高血圧
高血圧というとただ血圧が高いだけでそれほど危険性はないように感じますが、実はそうではありません。
高血圧は「サイレント・キラー」とも呼ばれ、その自覚症状はないにもかかわらず、突然死に繋がる心臓病や脳卒中などの重大な病気の原因となります。
血圧が高いほどこれらの病気にかかりやすくなり、その発症率は健康な人の3倍にもなるといわれています。単に高血圧といっても侮れない危険な状態なのです。
では、なぜこの高血圧と睡眠時無呼吸症候群がつながるのでしょうか。
睡眠時無呼吸症候群は無呼吸になることで血液中の酸素が不足し血管が収縮してしまい、夜中に何度も目が覚めてしまいます。
睡眠中は本来脳や身体を休めている状態ですが、何度も覚醒すると昼間と同じように交感神経が活発となり、心臓から必要以上に多くの血液が送り出されることになってしまうため高血圧になってしまうのです。
また、十分に眠れないことや日中の眠気から生じるストレス、肥満といったことも高血圧の原因となります。
糖尿病
高血圧のほかに重大な合併症としては糖尿病があります。
2008年に行われた国際糖尿病会議では、糖尿病と睡眠時無呼吸症候群の合併率は23%に及ぶという報告がされています。
糖尿病は、摂取した糖分を十分に代謝できなくなり、血糖が異常に増える病気ですが、この代謝異常の影響はほぼ全身の臓器や血管、神経系に及びます。
症状が進むと手や足の神経障害(糖尿病性神経障害)、腎臓の病気(糖尿病性腎症)、網膜の障害による失明(糖尿病性網膜症)などの恐ろしい病気の発生につながってしまうこともあります。
糖尿病の3大原因は、食べ過ぎ、太りすぎ、運動不足であり、これらは肥満に直結します。
先ほども触れたように睡眠時無呼吸症候群は肥満が原因で発症し、さらに肥満自体の原因ともなります。
この肥満が糖尿病を引き起こしてしまうのです。
5.睡眠時無呼吸症候群の検査
①睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群かどうかを診断する検査としては、通常の問診から血液中の酸素濃度を調べるパルスオキシメーターや呼吸による空気の流れを調べるアプノモニター、そして身体中にセンサーを付けて睡眠時の身体の状態を調べる睡眠ポリグラフ検査などが行われます。
②睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック
ただ、このような専門の医療機関における検査を受ける前に自分が本当に睡眠時無呼吸症候群かどうかを自分でチェックしたいという方もいると思います。
そのような方向けにネットで簡単にセルフチェックできるサイトがあります。
このサイトは睡眠時無呼吸症候群の治療器具を扱っている帝人が運営しているサイトで6つの質問に答えるだけで簡単な診断を行うことができます。
症状などに不安がある方は是非一度チェックしてみることをおすすめします。
6.睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群を治すための治療法としては、専用のマウスピースを用いた方法から鼻と口にパイプを付け空気を送り込むことによって強制的に気道を確保するCPAPという器具を用いた方法、そして外科手術が行われることもあります。
特にCPAPの改善効果は顕著であり、つけ始めたその日からぐっすりと眠れるようになるといわれています。
まとめ:睡眠時無呼吸症候群は早期発見が大切です
以上、睡眠時無呼吸症候群の症状やその原因について詳しく見てきました。
ただのやかましいいびきと思いがちですが実は大きな危険をはらんでいるのが睡眠時無呼吸症候群です。
それなのに高血圧や糖尿病と違いその認知度は高くないのが実情です。
睡眠時無呼吸症候群は適切な治療により改善できる病気ですので、たかがいびきと安心せず、不安があれば早めに専門の医療機関に相談することをおすすめします。
もし東京近辺にお住まいであれば銀座コレージュという病院がおすすめです。
無呼吸症候群の治療実績は17000件以上あり、治療方法も豊富です。
気になる方は下記ページを確認してみてください。
・睡眠時無呼吸症候群がわかる本 成井浩司
・いびきと眠気にご注意!睡眠時無呼吸症候群のすべて 成井浩司
・図解 睡眠時無呼吸症候群を治す! 最新治療と正しい知識 白濱龍太郎
・鼾は直せる 誰にでもある睡眠時呼吸障害の自己解決法 高崎雄司