不眠症

睡眠薬の種類とその強さについて

睡眠薬の種類とその強さ

現在、日本では多くの方が夜きちんと眠ることができない不眠症で悩んでいます。

この不眠症を病院でしっかり治療するとなると、多くの場合に睡眠薬が処方されます。

ただ、睡眠薬というと依存性副作用など悪いイメージがあるのが実情だと思います。

しかし、現在の睡眠薬は、研究・開発が進みこれらのデメリットが生じにくくなり、安全性は確保されてきています。

必要なことは、医師の指示に従い正しく服用すること、そして、患者さん自身も睡眠薬についてよく知ることです。

今回は、この睡眠薬について正しい知識を持っていただくために、睡眠薬の種類やその強さについてご紹介していきます。







1.睡眠薬の種類と強さ

睡眠薬の種類

まず、睡眠薬にはその作用の仕組みや強さから以下の5つの種類に分けることができます。

①バルビツール酸系

バルビツール酸系とは、1950~70年ごろに使用されていた初期の睡眠薬で、非常に強い催眠作用がある薬です。

この薬は、脳内の広範囲に作用し、特に脳の脳幹という部分への強力な抑制作用があります。

しかし、その反面、薬を服用し続けるとさらに量が必要になる耐性がつきやすく強力な依存性があります。

また、呼吸を抑制する作用もあり大量に服用するとの危険もあります。

睡眠薬は危ないというイメージは主にこのバルビツール酸系からつくられたもので、これらの重大な欠陥があるため現在ではほぼ使用されていません。

具体的な薬の名前:イソミタール原末、ラボナ、フェノバールなど

②ベンゾジアゼピン系

これらのバルビツール酸系の欠点を補うべく次に開発されたのがベンゾジアゼピン系という睡眠薬です。

催眠作用の強さの点ではバルビツール酸系に劣りますが、依存性や副作用が比較的少なく安全性の高い睡眠薬です。そのため、現在最も多く処方されています。

脳のGABA受容体という部分に作用し、ノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質の機能を抑えることで不安や緊張を緩和し眠りやすい体内環境にする効果があります。

ただ、安全性は高いものの副作用がないわけではなく、筋弛緩作用反跳性不眠(※)といった症状があらわれることがあります。

※副作用については後程詳しく説明します。

また、依存性もないわけではなく、2017年3月には厚生労働省より、ベンゾジアゼピン系の依存性について更なる注意喚起をするよう通達が出されています(※)

催眠鎮静薬、抗不安薬及び抗てんかん薬の「使用上の注意」改訂の周知について(厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課)

さらに、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は徐波睡眠の抑制作用があります。

徐波睡眠とは、睡眠徐波と呼ばれる特殊な脳波が出現する睡眠の状態のことで、睡眠の満足度はこの徐波睡眠の量に影響するといわれています。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では、この徐波睡眠が減少してしまうため睡眠の満足度も下がってしまう恐れがあります。

ただ、この徐波睡眠に関しては、睡眠薬以外の抗うつ薬や抗精神病薬といった徐波睡眠を増やす作用のある薬との併用することで欠点を補う手法もあります。

具体的な薬の名前:ハルシオン、デパス、レンドルミン、リスミー、ソメリンなど

③非ベンゾジアゼピン系

また、ベンソジアゼピン系と同じ作用をもたらすものの、その化学構造が違う非ベンゾジアゼピン系という睡眠薬もあります。

ベンゾジアゼピン系の筋弛緩作用や反跳性不眠などの副作用が軽減されており、より自然に近い睡眠を促す効果があります。

欧米ではこの非ベンゾジアゼピン系の方が多く使われています。

具体的な薬の名前:マイスリー、アモバン、ルネスタなど

④メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体作動薬は、比較的新しい睡眠薬で、睡眠を促すホルモンであるメラトニンと類似した作用を起こすことで眠りにつきやすくする薬です。

ベンゾジアゼピン系より催眠効果は弱いものの、安全性は極めて高く、特に体内時計の狂いを原因として生じる不眠に大きな効果があります。

また、薬を使わない治療法である認知行動療法との相性がいい薬であるといわれています。

さらに、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬のような徐波睡眠の抑制作用もありません。

具体的な薬の名前:ロゼレム

⑤オレキシン受容体拮抗薬

このほかにも脳の覚醒を司るオレキシンという物質を抑える作用を持つオレキシン受容体拮抗薬という薬もあります。

依存性がなく、ふらつきも生じにくいのが特徴とされていますが、2014年に発売されたばかりなので、今後実際の効果や副作用が評価されてくると思われます。

具体的な薬の名前:ベルソムラ

2.睡眠薬の作用時間による強さ

睡眠薬はこのような薬の作用の仕方だけでなく、薬の作用が持続する時間でも分類することができます。

主に、以下の4つに分類されます。

  • 超短時間型:3~4時間の効果
  • 短時間型:5~6時間の効果
  • 中時間型:7~8時間の効果
  • 長時間型:それ以上の効果

不眠症の症状は、寝つきが悪い入眠障害、途中で起きてしまう中途覚醒、早く起きてしまう早期覚醒などのタイプがあり、このタイプに合った作用時間の睡眠薬が処方されることになります。

具体的には、入眠障害の場合には作用時間の短い超短時間型や短時間型が使用され、中途覚醒や早期覚醒の場合には、効果が持続する中時間型や長時間型が使用されます。

寝つきも悪くて、しかも長く眠れないという場合には短時間型と中時間型、あるいは長時間型の2種類の薬が併用されることもあります。

なお、睡眠薬のことを睡眠導入剤と呼ぶことがありますが、これは睡眠薬の中でも作用時間が短いタイプの薬を総称して呼ばれる名前です。

先ほど紹介した作用の仕方の分類と作用時間の分類を合わせると以下のようになります。

分類 商品名 作用型
非べンゾジアゼピン マイスリー  

超短時間型

アモバン
ルネスタ
ベンゾジアゼピン ハルシオン
デパス 短時間型
レンドルミン
リスミー
エリミン 中時間型
サイレース
ユーロジン
ベンザリン
ドラール 長時間型
べノジール
ソメリン
メラトニン ロゼレム
オレキシン ベルソムラ

※参考:不眠の悩みを解消する本 三島和夫

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3.睡眠薬の副作用

睡眠薬の副作用

今の睡眠薬は安全性が確保されたとはいえ副作用が全くないわけではありません。

代表的な副作用としては以下のようなものがあげられまず。

①持ち越し効果

睡眠薬の催眠作用が起きた後も続いてしまうことを持ち越し効果といいます。

持ち越し効果には眠気が残るだけでなく、ふらつき頭重感倦怠感が生じる場合もあります。

特に作用時間が長い薬ほど、この持ち越し効果が生じやすいといわれています。

②早朝覚醒

持ち越し効果とは逆に、睡眠薬の効果が早めに切れてしまい明け方など早い時間帯に目が覚めてそのまま眠れなくなることがあります。これを早期覚醒といいます。

この早朝覚醒は作用時間の短い薬で起きやすく、作用時間がより長い薬に変更することで対応します。

③記憶障害(前向性健忘)

薬を飲んでから眠るまでの出来事や翌朝起きてからの出来事を覚えていないという記憶障害(前向性健忘)が起こることがあります。

作用時間が短い薬ほどこの記憶障害が起こりやすく、また、医師の指示を守らず多く服用してしまった場合やアルコールと一緒に飲んでしまった場合にも起こることがあります。

④筋弛緩作用

睡眠薬には筋肉の緊張を緩める作用があり、それによってふらつきや転倒の原因となってしまうことがあります。

高齢者の場合には、転倒によって骨折してしまう恐れがあるので注意が必要な副作用です。

この筋弛緩作用は、作用時間が長い薬に比較的多くみられます。

⑤反跳性不眠

睡眠薬を長期間服用し、突然服用をやめると今まで眠れていたのが急に眠れなくなってしまうことがあります。これを反跳性不眠といいます。

場合によっては、この反跳性不眠とともに不安感や焦燥感、イライラなどの離脱症状が生じることもあります。

反跳性不眠や離脱症状が起こらないようにするためには、自分の判断で勝手に薬の服用をやめないこと、そして、服用を中断する場合には徐々に減らしていくことを必ず守る必要があります。

⑥奇異反応

睡眠薬を服用したのにかえって不安や緊張が高まり、興奮したり上機嫌になって抑制を欠いた行動をとってしまうことがあります。

この症状を奇異反応といい、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用した時にごくまれに生じることがあります。

また、睡眠薬を服用したのに無理をして起きていたり、睡眠薬を多く服用した場合やアルコールと併用した時などにも生じやすいといわれています。

4.よく使われる睡眠薬

①マイスリー(一般名:ゾルピデム)

日本においてよく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるマイスリーです。

作用時間は4時間前後の超短時間型で、依存性や副作用が弱く作用もマイルドであるため軽症の不眠症に最適といわれています。

ただ、その分中等度以上の不眠症には効果が薄いといわれています。

②ハルシオン(一般名:トリアゾラム)

マイスリーとともに多く使われているのがベンゾジアゼピン系の超短時間型であるハルシオンです。

強い効果がありますが、反跳性不眠記憶障害が起こりやすいため、少量で抑える必要があります。

③サイレース(一般名:フルニトラゼパム)

中時間型・長時間型としてよく使われるのがベンゾジアゼピン系のサイレースです。

作用時間が長いため、中途覚醒早期覚醒のタイプの不眠の治療に使われます。

反跳性不眠が起こることは少ないものの、筋弛緩作用が強くあらわれることもあります。

④ロゼレム(一般名:ラメルテオン)

高齢者や体内時計の狂いが原因の不眠に多く用いられるのがメラトニン受容体作動薬であるロゼレムです。

筋弛緩作用など副作用がほとんどないのが特徴で安全性が高い薬ですが、他のベンゾジアゼピン系と比べると催眠効果は低いとされています。

5.睡眠薬の正しい使い方

このように睡眠薬にはいろいろな種類がありますが、これらに共通して服用時に守らねばならないことがあります。

①アルコールと一緒に飲まない

睡眠薬を服用した時はアルコールを含むお酒を飲むのは絶対に避けてください。

これらを併用すると、睡眠薬とアルコールの両方の催眠作用により持ち越し効果記憶障害が起こりやすくなります。

また、アルコールは催眠作用だけでなく不眠を引き起こすこともあるので注意が必要です。

②睡眠薬は眠る10~30分前に服用する

睡眠薬の効果は、飲んでからおよそ10~30分ほどであらわれます。ですので、飲んでからすぐ眠ることができるような準備をしておきましょう。

睡眠には周期があり、タイミングを逃すと睡眠薬を飲んだのに眠れないということにもなりかねません。

睡眠薬の効果を十分に発揮させるためにも眠る前に服用し、服用後はすぐに眠りに入るようにしてください。

まとめ

以上、睡眠薬の種類や強さについて詳しくご紹介してきました。

最初にも述べたように、現代の睡眠薬は安全性も高く、正しく服用すれば高い確率で不眠の症状を抑えることができます。

しかし、睡眠薬はあくまで症状を抑える対症療法です。

今後、睡眠薬の服用をやめても不眠が起こらないようにするには、食事や運動など健康で規則正しい生活を送ることも非常に大切です。

睡眠は日中の活動の要となる重要な休息時間です。

仕事や育児などに有効に時間を使えるようにするためにも、睡眠への向き合い方を今一度見直してみてください。







参考:
・不眠の科学 井上雄一 岡島義
・好きになる睡眠医学 内田直
・不眠の悩みを解消する本 三島和夫
・あなたに合う睡眠薬と精神安定剤 福西勇夫
・不眠の悩み解決BOOK 内山真
・眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療 塩見利明

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