睡眠障害

その居眠り病気かも?ナルコレプシーの4つの症状とその治療法

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ナルコレプシーの4つの症状と治療法

皆さんは日頃眠気を感じていますか?国の調査では、成人の約4割の人が日中眠気を感じながら過ごしていることがわかっています。通常は眠気があっても我慢しながら仕事や勉強に取り組んでいる人が大半だと思います。

しかし、まれにこの眠気に自分の意思では勝てず突然眠り込んでしまう場合があります。これはれっきとした病気であり、過眠症の一種である『ナルコレプシー』と呼ばれています。

今回は、このナルコレプシーの症状や診断法、治療法についてご紹介していきます。







1.ナルコレプシーとは

ナルコレプシーとは、別名「居眠り病」ともいわれ、日中突然強い眠気に襲われて、そのまま眠りに落ちてしまう病気です。

通常私たちは、多少眠気を感じることはあっても自分の意思で起きていることができますが、この病気の場合、たとえ大事な取引先との商談の際中であっても、テストの際中であっても、好きな人とのデート中であったとしても突然眠ってしまいます。

このナルコレプシーは世界では約0.05%の人がかかっているとされ、特に日本人がその中でも最も多く0.16~0.18%の人がかかっているといわれています。

10~20歳前半という若い世代、とりわけ14~16歳に最も多くみられる病気です。

この病気にかかると仕事中や授業中に居眠りをしてしまうため、仕事やテストで重大なミスをしてしまったりと社会生活に大きな影響を及ぼしてしまうことがあるので早期の治療が必要とされます。

しかし、周囲や自分自身でもこの病気を知らない限りただの怠慢と思われてしまうことが多く、発症から診断までに時間がかかってしまうことが多いのもこの病気の特徴です。

2.ナルコレプシーの症状

ナルコレプシーには突然眠ってしまう睡眠発作を含め主に4つの症状が挙げられます。

① 睡眠発作

先ほど触れたように、突然強い眠気に襲われ居眠りをしてしまう症状のことを『睡眠発作』といいます。

朝起きたときの眠気は通常の人と同じくらいにすっきりとしているのですが、昼から午後にかけて強い眠気に襲われる傾向があります。

この居眠りは、一日に複数回起こりますが、眠っている時間は短く5~15分程度で収まり、起きれば眠気はすっきりしています。しかし、数時間たつとまた眠気が襲い居眠りを複数回繰り返してしまいます。

また、人によっては眠気という表現ではなく、疲れやだるさ、集中力がなくなるといった形であらわれることもあります。

② 情動脱力発作(カタプレキシー)

睡眠発作のほかにナルコレプシーで特徴的なのがこの『情動脱力発作(カタプレキシー)』です。

情動脱力発作とは、突然全身の力が抜けてしまう症状のことをいいます。これは、喜怒哀楽などの感情の高まりによって興奮した時に起こるので「情動」という名前がついています。

軽い場合は、うまくろれつが回らなかったり、膝の力が抜けたりといったことで済みますが、ひどい場合は、全身強い脱力に見舞われ倒れこんでしまうこともあります。

この症状は、ほとんどの場合数秒、長くても1,2分で回復しますが、まれにこの脱力した状態のまま睡眠に移行してしまうこともあります。

この情動脱力発作は、ナルコレプシー患者の8割以上に見られる症状で、この症状がみられる場合は、高い確率でナルコレプシーであると診断されます。

③ 入眠時幻覚

入眠時幻覚とは寝始めてすぐに幻覚を見てしまう症状です。

通常の睡眠では深い眠りである長いノンレム睡眠から始まり、浅い眠りであるレム睡眠、そしてまたノンレム睡眠と繰り返していきます。眠ると人は夢を見ますが、起きたときに覚えている夢はレム睡眠の時に見る夢です。

しかし、ナルコレプシーの場合、ノンレム睡眠ではなくレム睡眠から始まってしまい、その時に見る夢が幻覚として鮮明に見えてしまいます。これが入眠時幻覚です。

入眠時幻覚では、幻聴や鮮明な幻視、浮遊感などを感じるといわれています。

また、夜寝たときだけでなく昼寝をした時でもこの入眠時幻覚が生じることがあります。

④ 睡眠麻痺

睡眠麻痺とはいわゆる『金縛り』のことを指します。

入眠時幻覚が起きているのは眠り始めのレム睡眠の時ですが、レム睡眠中は脳はまだ覚醒状態にある一方で、筋肉は完全に脱力状態となります。

そのため、鮮明な幻覚を見ながらも体は動かないという金縛り状態を体験することになります。

3.ナルコレプシーの原因

ナルコレプシー 原因 オレキシン

ナルコレプシーが発症する原因としては、現在オレキシンという脳内物質の不足遺伝的要因の2つが有力と考えられています。

① オレキシンの不足

オレキシンとは、脳の中でつくられる覚醒物質をコントロールする働きを持っており、オレキシンがあることで人は覚醒状態、つまり起きた状態のままでいることができます。

ナルコレプシーはこのオレキシンが何らかの原因により働かなくなることで発症することがわかっています。実際にナルコレプシー患者の9割以上がオレキシンをつくるニューロンが変性・脱落していることが明らかになっています。

このことからアメリカではすでにナルコレプシーの診断に髄液中のオレキシン濃度の測定が取り入れられています。

② 遺伝的要因

ほかにもナルコレプシーには白血球の血液型であるHLA(ヒト白血球抗原)が関わっていると考えられています。

通常私たちが思うA型、B型といった血液型は赤血球のものですが、白血球にも同様にHLAという型があります。その種類は数万通りあるといわれていますが、日本人のナルコレプシー患者のほぼ全員が特定のHLAを持っていることがわかっています。

ただ、健康な一般人の中にも12~38%の人に同じHLAを持っている人がいるのでこのHLAが直接の原因であるとは言い切れません。

また、同じ遺伝子・血液型を持つ一卵性の双子の場合でも、双方とも発症する確率は約30%とそれほど高くないことからも、遺伝的要因だけでなく環境など後発的な要因も大きいのではないかといわれています。

4.ナルコレプシーの診断・検査

ナルコレプシーの診断には通常の問診のほかに『睡眠ポリグラフ検査』や『MSLT(睡眠潜時反復検査)』が主に行われます。

① 睡眠ポリグラフ検査

病院に泊まって睡眠中の脳波図、眼電図、筋電図などといった生理的指標を一晩中測定する検査を睡眠ポリグラフ検査といいます。一晩の中で、覚醒や睡眠状態がどのように変化しているか、どのくらいの深さの眠りがどのくらいの時間あらわれているかなどをつかむことができます。

ナルコレプシー 睡眠ポリグラフ検査

引用:研究検査科

② MSLT(睡眠潜時反復検査)

ベッドに寝た状態で脳波を記録し、記録開始から入眠するまで、つまり眠るように指示してからアルファ波が消えるまでの時間(睡眠潜時)を測定します。この検査によって、昼間の眠気を客観的に計測することができます。ナルコレプシーでは、この睡眠潜時が8分以内という診断基準があります。

③ その他の検査

ほかにも『3.ナルコレプシーの原因』で触れた白血球のHLAを調べる血液検査や、腰部から髄液を採取しオレキシンの量を測定するオレキシン検査もあります。しかし、これらは残念ながら健康保険が適用されておらず、測定する際に高額な費用がかかってしまいます。

④ナルコレプシーのセルフチェック(エップワース眠気尺度)

これらのような設備が必要な検査ではなく、自分でナルコレプシーを含む過眠症かどうかをセルフチェックできるものとして『エップワース眠気尺度』があります。

自分がナルコレプシーかどうか不安だという方は一度測定してみることをお勧めします。

icon-external-link 過眠症セルフチェック(エップワース眠気尺度)

5.ナルコレプシーの治療

ナルコレプシー 治療 薬

ナルコレプシーの治療としては主として薬物治療が行われます。そして、服用する薬も症状に応じたものが使われます。

大きく分けると日中の眠気などの①過眠症状に対する薬と、情動脱力発作や入眠時幻覚などの②レム睡眠に関連する症状に対する薬の2種類が処方されます。

① 過眠症状に対する薬(中枢神経刺激薬)

日中の過度の眠気に対処するためには、脳の神経を活性化させる中枢神経刺激薬という種類の薬が使われます。

使用する薬の候補としては、モダフィニル(モディオダール)メチルフェニデート(リタリン)ペモリン(ベタナミン)の3種類が挙げられます。

基本的には、近年日本でも使用ができるようになった新薬で依存性が少なく副作用も比較的少ないモダフィニルが使用されます。ただ、覚醒作用はメチルフェニデートと比べると弱いといわれています。

また、ほかの2薬に比べて少ないだけで副作用がないわけではありません。多いのが頭痛で、3人に1人の割合で起こるといわれています。ほかにも動悸、食欲低下、口の渇きなども起こる可能性があります。

モダフィニルを投与しても効果が得られない場合、メチルフェニデートが使われることがあります。ただ、この薬はその効果や依存性から生じた不正使用が社会問題になったこともあります。

2007年(平成19年)9月18日、リタリンを服用し続けていた25歳男性が依存症になった末、2005年(平成17年)に自殺する事件が起きたことが報道された。当該男性は名古屋市の男性医師によって十分な診察もせずにリタリンを処方されたことが報道で明らかになり、リタリンの問題が知られるようになった[15][16]。

引用:Wikipedia

日本睡眠学会が定める『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』でも以下のように使用には十分注意が必要だということを明示しています。

メチルフェニデート(リタリン)
(略)
長期連用期間中における依存・乱用を含めた不正使用の問題により、最近では本剤 は「リタリン登録医」のみが処方可能となっている。このような問題を抑制する上 でも、メチルフェニデートを主剤として使用することはなるべく避けたい。従って、 最重症例を除くと、極量を用いることは避けるべきである。

・ メチルフェニデートの主な適応
A. モダフィニルを保険適用量上限まで投与しても十分な改善が得られず、社会生活上問題となる眠気・居眠りが残遺する場合
B. すでに長期間本剤を服用していて、他剤への置換が困難なケース
C. 副作用のために他剤使用が困難か、増量が不可能な場合

・ リタリンの使用を余儀なくされるケースでは、MSLT により、必ず診断・重症度を正 確に把握しておくべきである。

・ 依存形成を避けるためには、活動の少ない休日などに休薬日を設けるのも一法であ る
・ 投与開始初期に生じる頭痛、消化器症状、ほてり感、動悸などの発現にも注意すべ きである。

引用:ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン(日本睡眠学会)

残りのぺモリンは、ほかの精神刺激薬に比べ多幸感がないことから乱用は少ないといわれていますが、副作用として動悸や食欲不振・頭痛などのほかに肝障害が起こる可能性もあるので、服用中は定期的な検査が必要となります。

こうした副作用・依存性の観点からも新薬であるモダフィニルの効果には期待がされています。

また、日中眠くなる過眠症状に関しては、薬物治療だけでなく生活習慣の見直しも効果があります。夜に十分な睡眠を確保し、規則正しい生活を送るのはもちろんのこと、短時間の昼寝も日中の眠気の軽減に有効な手段となります。

② レム睡眠に関連する症状に対する薬

情動脱力発作などのレム睡眠に関連する症状に対処する薬としては、クロミプラミン(アナフラニール)といった三環系抗うつ薬やパロキセチン(パキシル)といったセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 、ミルナシプラン(トレドミン)といったセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)といった薬が候補に挙げられます。

この中では三環系抗うつ薬が効果も安定していて主に使われています。

また、①や②で挙げた薬のほかに、夜中に起きてしまう中途覚醒を防ぐために不眠症の睡眠薬として使われるベンゾジアゼピンが使われることもあります。

まとめ:ナルコレプシーの治療には周囲の理解が大切

以上、過眠症の一種であるナルコレプシーの症状やその治療法などを詳しく見てきました。残念ながらこのナルコレプシーは根治が難しい病気であるといわれ、薬で軽減はできても服用をやめれば症状はまた戻ってしまいます。

また、最初に述べた通り、この病気は格別珍しい病気というわけではなく誰にでも起こりうる病気です。

ですので、周囲の人がナルコレプシーという病気のことを理解した上で、患者さんの生活に極力支障が出ないように協力していくことが必要不可欠です。

少しでも多くの人がこの病気のことを知り、ナルコレプシーへの理解が深まれば幸いです。

※この記事を読み、ご自身やご家族などに不安を感じた場合は速やかに専門医へ相談することをお勧めします。専門医については日本睡眠学会がHPにて睡眠認定医療医を紹介していますので下記リンクをご覧ください。

icon-external-link 睡眠医療認定医リスト(日本睡眠学会)










参考:
・睡眠障害のなぞを解く 櫻井武
・眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療 塩見利明
ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン(日本睡眠学会)
おくすり110番
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